■相続問題
相続

 人の死亡によりその人の権利義務が別の人に引き継がれるのが相続です。
亡くなった人が被相続人、被相続人から権利義務を承継する人が相続人です。相続人が2人以上の場合、相続分や分割方法の問題が発生します。原則、相続人の協議でその問題を解決しますが、協議が調わなければ民法で定められた法定相続分、寄与分、特別受益を基本に家庭裁判所で解決するようになります。
 また、遺言書が書かれていた場合、遺留分の問題があるとしても遺言書の内容が優先されます。
 当事務所ではこれら相続に関する手続きのアドバイスや事務手続きを分かり易くスムーズにお手伝いしております。


■生前贈与

 贈与とは、自分の財産を相手方に無償で与え、相手方はそれを受諾する契約です。契約ですから相続とは法律的には異なるものです。しかし相続税法では相続税だけでなく、贈与税についても定めています。生前贈与をすることによって相続税を納めることを回避または低く抑えることができるので贈与税は相続税を補完するために同一の法で規定しているわけです。1月1日から12月31日の1年間に1人が受けた贈与金額が110万円までは無税、110万円を超える額が増える毎に税率が高くなる累進課税となっています(暦年課税)。不動産を贈与するとなると少なくとも数百万円以上になるので高率の贈与税が課せられることになります。ただ、次のような税制がありますので上手に利用してください。

■相続時精算課税制度

 65歳以上の親から20歳以上の子(子が亡くなっている場合、 20歳以上の孫を含む)へ生前贈与において、2500万円(複数年に渡り利用できる)までは贈与税が係らなく、2500万円を超えた分については20%の贈与税が課せられるものです。相続発生まで贈与税を猶予され、相続が発生した時に精算(贈与分が相続財産に合計されて相続税として計算)する制度です。一見すばらしい制度のように見えますが、デメリットもあります。一旦この制度を採用すると暦年課税制度に戻ることはできません。暦年課税での毎年110万円の控除が使えなくなります。また亡くなる前3年間の贈与を除き、相続時精算課税制度のように相続時に今までの贈与額が加算されることがありません。でも一度に大型の贈与をしたい場合などには、この制度を使うメリットがあると思います。相続時精算課税制度を利用する場合は当センターへお問い合わせ下さい。

■住宅取得等資金の贈与の特例

 平成23年まで自己の居住用の住宅取得等資金として直系尊属(父母または祖父母など)から贈与を受けた場合1000万円の控除が認められる制度が平成24年以降も延長されました。平成24年については1000万円(一定の省エネ住宅などは1500万円)、平成25年は700万円(同1200万円)、平成26年は500万円(同1000万円)です。
 住宅取得等資金の贈与の特例を受けるには相続時精算課税制度と同じく受贈者の年齢が20歳以上の要件が必要ですが、贈与者には年齢制限や両親に限らず祖父母からの贈与も対象になる点が異なります。また、受贈者の所得金額が2000万円以上だとこの特例は受けられません。


■夫婦間の贈与の特例

 婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、基礎控除110万円の他に2000万円まで控除できる制度です。
特例を受けるための適用要件は以下のとおりです。
1、夫婦の婚姻期間が20年を過ぎた後に贈与が行われたこと
2、配偶者から贈与された財産が、自分が住むための居住用不動産であることまたは居住用不動産を取得するための金銭であること
3、贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与により取得した国内の居住用不動産、または贈与を受けた金銭で取得した国内の居住用不動産に、贈与を受けた者が現実に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであること


■相続人
 
 相続人には順位があって、第一順位として子と配偶者、子がいない場合(孫がいる場合は孫が子に代襲して相続人となる。これを代襲相続といいます。)は第二順位の親と配偶者、親もいない場合(祖父母もいない)は第三順位の兄弟姉妹と配偶者が相続人となります。なお配偶者は常に相続人となります。兄弟姉妹もいない場合は配偶者だけとなり、配偶者もいない場合は、相続人不存在となり、特別縁故者や国が相続財産を承継することになります。

法定相続分

1.相続人が配偶者と子の場合、配偶者2分の1、子2分の1。
2.相続人が配偶者と父母(祖父母)の場合、配偶者3分の2、父母3分の1。
3.相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合、配偶者4分の3、兄弟姉妹4分の1。
4.子などが複数いる場合は原則として均等割りとなります。例外として、非摘出子(婚外子)は摘出子(夫婦間の子)の2分の1となり、半血兄弟(父母のどちらか一方を同じくする兄弟)は全血兄弟の2分の1となります。
ただし、平成25年12月5日の民法の一部改正により、前半部分が削除され、嫡出子と非嫡出子は均等割りになりました。

特別受益
 
 被相続人から生前に他の相続人と比べて特別に贈与を受けた場合をいい、それを相続財産の前渡しと看做(みな)すことで、それぞれの相続人の取り分が変わってきます。たとえば、長男が商売をするためにその資金として被相続人から500万円の生前贈与を受けた、または被相続人から自宅を建てるための敷地の贈与を受けたなどがこれに当たります。

● 寄与分

 被相続人の相続財産に寄与をして本来の相続財産よりも多く相続財産を残すことができた場合のその増えた分をいい、本来の相続分に加算することができます。たとえば、被相続人が商売をしていたが、長い間病気で仕事ができない状態であったところ、配偶者が一生懸命にその商売をして財産を増やす、または維持してきたことは、通常に配偶者が行う手伝いを超えるものでこれに当たります。
          
遺言
■遺言書
 
 親族間の争いを避ける完璧な方法はありません。しかしその争いを少なくする方法はいくつかあります。その中で遺言は、相続争いを未然に防ぐ、または最小限度に抑える効果のあるものです。
 遺言書を残しておけば原則その遺言書のとおり相続されることになり、親族間の争いはかなり防げるのです。特に相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合は相続争いになるケースが多いので必ず遺言書を書いておきましょう。
 遺言は貴方ができる最後の法律行為です。貴方の最後の意思が遺族に届くのです。 当センターが取り扱った相続でも遺言書があれば相続人間のトラブルを避けられた事例が幾つもあります。
 また一度書いた遺言書の内容を変えたいときには新しく遺言書を作成すれば書き換えたことになります。

 当センターの標語は、「40歳過ぎれば遺言書を書きましょう」です。

■遺言書の種類
 
 遺言書には普通方式である自筆証書遺言、公正証書遺言および秘密証書遺言と特別方式である死期が迫った人の一般危急時遺言などがあります。最も多い方式が公正証書遺言で次に自筆証書遺言となります。
 遺言書の効力はどの方式の遺言書も同じです。複数の遺言書が存在する場合であって、新しい遺言書と古い遺言書が抵触するときは、その抵触部分については新しい遺言書が有効となります。


●自筆証書遺言
 
 一番手軽に作成できるもので、全文を自署し、日付・氏名を入れ、押印することが必要です。ほとんど費用を必要としないので何回も書き直しができます。また内容の秘密保持にも適しています。しかし無効・偽装・変造・滅失・隠匿・未発見のおそれがあり、また家庭裁判所での検認手続きが必要です。 

●公正証書遺言

 証人2人以上の立会いのもとに公証人が遺言書を作成します。公正証書遺言の原本の保存期間は20年間となっていますが、実際は半永久的に公証人役場が保管しています。
 公正証書遺言では偽装・変造等のおそれはなく、また公証人が遺言内容を書くので無効になる心配もなく、それに家庭裁判所での検認の手続きが不要です。
 また本人が病気などで外出できない場合は、公証人に出張してもらうことができます。
 以上のことから、公正証書遺言には欠点が無いようですが、ただ自筆証書遺言と違って公証人の費用が必要となります。それでも、最も安全確実な遺言方法と言えます。
 なお自筆証書遺言も同じく遺言執行者を遺言内容として記載しておくと、遺言内容を現実化する手続きがスムーズに行われるので忘れずに書いておきましょう。



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