離婚問題
■離婚

 結婚は少子化の影響で毎年減少傾向にあります。反対に毎年増加傾向にあるのが離婚です。結婚は法的にはお互いの気持ちと婚姻届出だけですが、離婚は子供の親権や財産分与など決めなければならないことが沢山あります。
 結婚は当事者の結婚する意思が合致しなければできませんが、離婚は意思の合致でできることはもちろん、その他に一方から強制的にできる点が結婚と異なります。
 離婚には協議による離婚以外に、調停による離婚、審判による離婚や裁判による離婚があります。協議離婚以外だと公の機関にて行うので、離婚において決めるべき事項に漏れが生じることはないのですが、協議離婚では何も決めずに離婚届出を提出し、後でトラブルになることが多々あります。
 

離婚において決めるべきこと

1、未成年の子がある場合、親権者をどちらか一方に決めなければなりません。
2、一般的に親権者に成らなかった親が毎月いくらの養育費を支払うかを決めます。
3、親権者に成らなかった親が子に定期的に会うことを決めておきます。
4、結婚してから築いた財産の清算する意味合いである財産分与について分け方を決めます。
5、離婚の原因を作った方は、相手方から請求があれば慰謝料を支払わなければなりません。その額や支払方法について決めておきます。
6、一方が病気療養中などですぐに働ける状態ではない場合、一定期間、他方から扶養料をもらえるようその額を決定します。
7、結婚の際、氏を変えた方は離婚に際して元に戻すか、そのまま継続するか決めなければなりません。同時に子の氏についても決めなければなりません。
8、結婚して夫が住宅ローンを組んで自宅を建て、離婚において妻が自宅を財産分与により取得する場合、その住宅ローンをどのように取り扱うか決めなければなりません。
9、お互いの将来がどのようになるのか分からないので、養育費の増減ができるように決めておきましょう。


■協議離婚

 協議離婚がもっとも多い離婚方法です。口約束だけでは後々トラブルが発生する可能性が大です。離婚協議書を作成してトラブルを未然に防ぎましょう。養育費の請求事項がある場合は、離婚協議書を公正証書で作成するとより安全です。公正証書で作成すると養育費の振り込みが滞った場合に、強制的に給料などの差押が比較的簡単に行えます。
 協議離婚の場合、離婚協議書に親権、養育費、面接交渉権、財産分与、慰謝料、その他合意したことを記載し、署名押印した上で離婚届出を行いましょう。

調停離婚・審判離婚・裁判離婚
 家庭裁判所における調停、審判、裁判所の判決によって成立する離婚のことです。ただし、いきなり裁判で離婚することはできません。まず家庭裁判所へ調停離婚の申し立てをし、調停委員が双方の間に立ちお互いの言い分を聞き、調停案を提出して双方が納得すれば調停成立となります。しかし双方が歩み寄れず出された調停案に納得できない場合は審判による離婚に進むことができます。
 当センターでは、調停離婚、審判離婚や裁判離婚で離婚される場合はその手続き方法のご説明をいたします。代理人を立てて臨む場合は、提携弁護士をご紹介いたします


■親権

 離婚する夫婦に未成年の子がいる場合、どちらか一方を親権者に決めなければなりません。親権とは子を養育、監護したり、財産管理や子の法律行為に同意や代理したりする権利であって義務でもあります。親には子を成人するまで育てていく権利と義務があります。 父母が共同して親権を行うのが原則ですが、離婚する場合には片方だけにしか親権が与えられません。だとしても親権を失った一方がその子との親子関係が無くなるものではありません。
 離婚に際してどちらが親権者になるのか話し合いで決めます。話し合いが付かなければ家庭裁判所での調停または審判で決定することになります。審判で決定する場合、親の都合ではなく、子の幸せを考えて子の立場から親権者を選ぶことになります。


■養育費

 離婚の際、夫婦に未成年の子があれば、親権者をどちらか一方に決めなければなりません。日本では母親が親権者になるケースが圧倒的に多いようです。親権者となったものは子を監護する権利や義務があります(監護権を親権者から分離して、父親が親権者、母親を監護権者とする場合もあります)。子を監護養育していない一方の親から監護養育しているもう一方の親にその費用の分担金(養育費)を支払うことになります
 養育費は子が成人になるまで支払うケースが最も多く、大学卒業までや高校卒業まで(社会人として自立した場合)支払うものもあります。どのくらいの額を支払うのかは親の生活水準によって異なります。協議離婚での統計はありませんが、調停離婚では一人当たり2〜4万円のケースが最も多いようです。
 養育費の未払いは以前から問題となっていました。数年前に法改正があり、給料の差押可能な額が増額され、また将来の養育費も差押できるようになりました。養育費の未払いがあった場合、原則として調停や裁判を起こしてから強制執行の手続きに入らなければなりませんが、協議離婚においては離婚協議書を公正証書で作成されておれば、即座に強制執行の手続きに入ることができます。


■子との面接

 夫婦が離婚すれば夫婦の縁が切れて他人になりますが、親子の縁が切れることはなく親子関係に変わりありません。親権者にならなかった親は、子の養育に支障がない範囲内で子と会う権利が認められています。
 具体的な面接方法は決まっていません。月に数回、年に数回、春休みや夏休みに数日、単独で、親権者と伴に、いろんなケースが考えられますが、父母が子のために協議して決めることになります。夫婦の感情のもつれから子の面接を嫌がる場合も多いのですが、子の福祉のため協議をし、協議が整わない場合は家庭裁判所の調停または審判となります。


■財産分与

 財産分与とは、婚姻期間中に築いた財産を清算することです。夫が外で働いて妻が専業主婦の場合、預貯金や自宅が夫名義になるケースが多いと思われますが、そうであっても夫婦が協力して築いてきた財産なので、離婚する際に夫から妻へ分与することになります。
財産名義については収入ある人の名義にしなければローンが組めない、または贈与税が発生するとの理由で多くは夫名義または共有名義にしています。婚姻中であれば名義がどちらにあっても二人で利用できるので特に問題にはなりません。しかし、離婚となると、潜在的な夫婦共有財産を顕在化しなければなりません。
 財産分与の対象となるものは、不動産、預貯金、株式、会員権などで、最近では夫の厚生年金も分与の対象となっています。また、将来の退職金についても離婚から退職金支給までの期間が短ければ分与の対象となります。この期間については諸説がありますが、いくつかの判例によればおおむね5年以内であれば認められるようです。
具体的な財産分与の額については、一般に婚姻期間が長ければ財産をたくさん築くので多額になりますが、財産の取得、維持に夫婦がどれくらい貢献したかなど一切の事情を考慮して決定されるべきです。
 財産分与と混同されることがよくある慰謝料は、離婚原因を作った一方が相手方に支払う精神的損害を賠償するものです。これに対して財産分与は夫婦共有財産の清算手続です。ですから有責配偶者からの慰謝料請求はできませんが、財産分与の請求をすることができます。ただ、慰謝料も財産分与も金銭や不動産の財産で支給されるので合計して算出される場合が多いのです。
 財産分与は二人で築きあげた財産を分け合い清算するものですから、結婚以前から所有する財産、あるいは相続により取得した財産は財産分与の対象になりません。  財産分与について話し合いがつかない場合は、家庭裁判所へ財産分与の調停申立を行います。調停案が提示され、双方同意すれば調停成立となります。もし調停が不調になれば、審判で決定されることになります。不動産、動産や金銭を財産分与として配偶者間で移動しても、原則として贈与税は課せられません。一般的に対価の無い財産の移転には贈与税が課せられますが、財産分与は夫婦間の財産を清算したに過ぎないから贈与税が課せられないのです。ただし値上がりした不動産を財産分与の対象とした場合は、譲渡益に対して不動産譲渡所得税が課せられる場合があるので注意が必要です。


■慰謝料

  慰謝料とは、有責な行為によって精神的苦痛を受けた方が有責配偶者に対して受けた損害を金銭で表して請求できる額のことです。
 慰謝料は有責な行為によって離婚の原因を作った方が相手方に支払うものなので、性格の不一致だけが離婚原因である場合には慰謝料の問題が生じません。また、お互いが浮気をして離婚の原因を作った場合もお互い同程度の有責度であれば慰謝料請求はできません。    有責な行為として代表的なものは、浮気、暴力、悪意の遺棄(扶養義務の放棄)などが挙げられます。慰謝料の額は有責の程度、期間などで差が生じることはもちろん、お互いの資力、社会的地位、婚姻期間などでも差が生じます。また一方だけが有責な場合は少なく、他方にも有責が認められる場合はその責任の度合で判断することになります。
 慰謝料は有責な行為によって離婚の原因を作った方が、相手方に支払うものばかりでなく、浮気の相手方が結婚していることを知って不倫関係になった場合はその相手方にも請求できるのです。なお、それが原因で夫婦が離婚した場合は当然、離婚に至らなかった場合も慰謝料請求ができます。
 では具体的な慰謝料の額がいくらなのでしょうか。芸能界では数千万円とか数億円とか言われていますが、庶民とは別世界ですし、その金額は財産分与を含む額となっている場合が多いのです。強いて言えばその額100万円から300万円が多いのではないでしょうか。


■扶養料

 婚姻中は夫婦で互いに婚姻費用を分担しなければなりませんが、離婚と同時にその義務がなくなります。離婚に至っていない場合であれば、夫婦が別居中であってもその義務があります。
 しかし、乳幼児を抱えている専業主婦や病気療養中の者が財産分与や慰謝料が少ない、または無い場合などでは、いきなり離婚によって無収入になると生活ができなくなる場合があります。この場合、一定の職に就けるまで、または健康を取り戻すまでの一定期間扶養料を支払う必要があります。すべての離婚に扶養料を伴うものではありませんが、このような一定の場合扶養料または財産分与や慰謝料の名目で支払われることがあります。


■氏の変更

 婚姻により氏を改めた者は元の氏に戻るのが原則です。父母の戸籍に戻るか、筆頭者として新たに戸籍を作るかのどちらかになります。
 婚姻中の氏を称する場合は、離婚後3ケ月以内に届けることによって婚姻中の氏を使うことができます。この場合、必ず新戸籍を作らなければなりません。父母と氏が異なる者が同一戸籍には入れないからです。
 子がいて母が親権者となる場合、母が新戸籍を作っても当然には子は父の戸籍から母に戸籍に入ることはありません。家庭裁判所へその子の氏を母と同じ氏に変えることの許可を得て、戸籍法の定めるところにより届けることによりその子は母の戸籍に入籍できるのです。ですから子と同じ戸籍に入るためには、離婚の際、父母の戸籍に戻ることはせず、新たな戸籍を作る必要があります。父母の戸籍に戻ると、子は祖父母の戸籍に入れないからです(三世代同一戸籍の禁止)。


■住宅ローン

 妻が子の親権者となり、子といっしょに生活するうえで子の環境をなるべく変えないため、現在の住宅に住み続けるというのがベストである場合が少なくありません。そこで財産分与として夫名義の住宅をもらい受けるのは良いのですが、一番考えなければならないのが住宅ローンのことです。
 別れた夫が住宅ローンを払い続けてもらえるのが一番良いのですが、途中で支払わなくなれば自宅は競売に掛けられ出て行かざるを得なくなります。
 妻がその住宅ローンを支払っていく場合には2パターンが考えられます。1つは債務者の名義を夫のままにして妻が支払っていくパターンですが、夫が新しい家を建てるための住宅ローンを組めないことが考えられます。もう1つは債務者を妻に変更した上で返済していくケースで実態に合った方法ですが、妻の収入が一定程度なければ銀行が承諾しないと思われます。
 なお財産分与として自宅を取得するのではなく、子が成人するまで自宅に住む権利を取得する方法も検討する価値があると思います。

■その他

 子供の無い夫婦が離婚した場合は、離婚が成立した段階でほとんどの法律問題が同時解決されることが多いかと思いますが、子がいる夫婦の場合は子が成人するまでに数年から10数年かかります。その間に収入の増減、病気や失業、または再婚や子の誕生などがあって養育費について変更が必要になることが考えられます。離婚の際に事細かく決めることは難しいので事情変更の規定を話し合って決めておく必要があります。
  離婚協議中に一方的に離婚届を役所に出される場合や、離婚協議がまとまり離婚届に印を押したもののその後離婚したくなくなったにもかかわらず相手方が離婚届を提出する場合が多々あります。このような場合は離婚届不受理申出を本籍地の役場に提出しておけば心配いりません。離婚届は提出される段階でお互いに離婚の意思が無ければ離婚は無効です。しかし、一旦受理された離婚届を無かったものにするには大変な労力がいるのでこの制度を利用するのがよいでしょう。


お気軽にお問い合わせください087-861-7963